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『一日で3600人に追い抜かれたランナー』

 

 

 

これは決して競い合う数字ではありません。

 

ある男性の普段あまり味わうことのない、そして取り上げられることのない体験をRecordBook宮崎では記録認定いたしました。

 

その男性の名は末永晃さん(47歳)40代になってマラソンを始めた市民ランナーです。

 

今回ご紹介するのは彼の強烈な思い出、そして認定対象となったレースです。

 

 

【プロローグ】

 

いまやマラソン人口は伸び続け、1000万人を超えたといわれる今その大半を占めるのがいわゆる「市民ランナー」といわれる方達です。

 

わが宮崎県でも市民が参加できるハーフを含めたマラソン大会は年間15を超えるほど開催しており、末永さんもそのいくつかの大会のハーフマラソンに出場してきました。

 

そして2011年、地元の自然を満喫して心身ともに高めながら達成感を味わえるレースに魅せられた彼はついにフルマラソン出場を決意しました。

 

彼が選んだのは県内の大会の中でも規模が大きく、その人気度から県内外でも有名な「青島太平洋マラソン」です。

 

舞台となる青島太平洋マラソンとはサンマリンスタジアムから北へ宮崎市街地を抜け宮崎神宮を折り返して次は青島神社を目指して南下、そして海岸線を眺めながら再びサンマリンスタジアムに戻るというコース設定です。

 

宮崎の穏やかな気候、起伏があまりなく美しいコース、そして宮崎神宮と青島神社間を走るということで『神にいだかれたコース』ともいわれます。

 

 

【見栄を張ってしまった!】

 

さて末永さんの話に戻ります。青島太平洋マラソンにご参加された方はおわかりだと思いますが、スタート位置を決めるにあたり、まず自己申告で自分の基準タイムを提出します。

 

ここで彼は見栄を張ってしまいました。なんと初心者であるにも関わらず初フルマラソンで「2時間台」のタイムを申告してしまったのです。

 

その結果スタート地点での立ち位置はなんと“最前列”つまり最も速い一団に入ってしまったわけです。

 

参考までに、2014年3月6日現在の世界記録が2時間3分23秒、あのアースマラソンを敢行した間寛平さんのベストタイムが3時間8分42秒ということなので、このポジショニングは当然といえば当然だったのでしょう。

 

 

【唯一の長ズボン】

 

スタート位置についた末永さんがまず違和感を感じたのはその服装でした。

 

彼の周りはことごとく短パンいわゆるアスリートランナーそのもののいでだち、一方彼はというとご自身いわく『寝間着のような』スウェットパンツ…。

 

大いなる不安を感じながらもレースは始まりました。

 

 

【人に引っ張られるということ】

 

人は環境に左右されやすいといいますが、マラソンのようなスポーツではそれが一層顕著に現れます。速いランナーに囲まれていることで当初彼のラップタイムはこれまでの記録を上回り順調な走り出しでした。

 

しかしそれも束の間、後方から迫りくる短パンの群れが彼に襲いかかるのでした。

 

 

【錯覚】

 

このレースの間彼は不思議な体験をしています。それは「一生懸命前を向いて走っているのに景色が前に流れていく」という感覚です。

 

未経験の私たちに置き換えれば「車に乗ったまま自動洗車機で洗われるような感じ」が長時間続くということのようです。

 

 

【終盤トロピカルロード】

 

ゴールを目前にひかえたレース終盤、ランナーたちは海岸線の名付けて『トロピカルロード』を走り抜けます。風景が素晴らしく、気持ちの良いところです。

 

ただこの過酷なレースの状況下では『まったくトロピカルな雰囲気を味わうことはできなかった』と末永さんは言います。その点についてはわれわれも想像に難くないと思います。

 

 

【今年も出るよ】

 

レースは終わりました。末永さんは見事に初フルマラソン完走を果たしました。

 

今回認定にあたってわれわれは完走証明書の提出を彼に求め、その控えが今私の手元にあります。

 

順位3644位 タイム4時間47分56秒 先頭の20人からレースを始め、一日でおよそ3600人に追い抜かれたことになります。

 

似たような経験をお持ちの方は沢山いらっしゃるかもしれません。がしかし今回このレコードをご紹介したのは、われわれはあらゆる失敗を活力や笑いに変える「心のリサイクルエネルギー」を提唱しているからです。

 

そして我々は“すべての県民を記録保持者に”という理念をもってとりあげました。

 

ちなみに末永さんの翌年2012年のタイムは4時間18分 17秒昨年2013年はお仕事の都合で不参加だったとの事。

 

インタビュー最後に「今年は…?」とお聞きしたところ笑顔で「今年もでるよ~」と言ってくださいました。挑戦者に幸あれ。

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